アドラー心理学サロンです。
今回は、「課題の分離」から「共同体感覚」へどのように進んでいくのか、その道筋についてご説明します。
アドラー心理学では、対人関係における、入り口には「課題の分離」があり、そのゴールは「共同体感覚」となります。
おさらいですが、この「共同体感覚」とは、「他者を仲間だと見なして、そこには自分の居場所がある」と感じることです。
最初に課題を分離します。
私の課題はここまで、ここから先は他者の課題であると認識します。
そして、他者の課題には介入しない、自分の課題にも介入させないと線を引く。
ここで言う「課題の分離」からどのように対人関係を築き上げ、仕事、交友、愛というタスクを乗り越えて最終的に「共同体感覚」を獲得する道筋がどういったものなのか、下記にて解説していきます。
先ず、「課題の分離」がなぜ、どのように良好な人間関係に繋がっていくのか、どうすればお互いに協調して協力しあえる関係になれるのか、これは「横の関係」という概念が重要となります。
アドラー心理学では、すべての対人関係を「横の関係」とすることを提唱しております。
つまり、すべての人間は、子供も親も、教師も生徒も、上司も部下も、「同じでないが対等な個人」という関係性です。
そもそも、上下関係のある「縦の関係」の中では、承認欲求が必ず必要となり「課題の分離」をすることが不可能なのです。
誰かに認められたい、あるいは認めてやろうとすること、誰かを褒めようとする、あるいは褒めてやろうとすること。
これらは対人関係全般を「縦の関係」として捉えている決定的な証拠なのです。
わかりやすいところで言うと、親子関係や先輩後輩関係を例とすると、子供や後輩を育てるのにあたり一般的には二つのアプローチがあります。
叱って育てる方法と褒めて育てる方法です、しかしアドラーは賞罰教育を激しく批判しております。
アドラー心理学では、体罰はもちろんのこと、褒めることも叱ることも徹底して否定する立場と取ります。
褒めるという行為には、「能力や地位の高い人が、能力や地位の低い人に下す評価」という側面が含まれております。
つまり、「よくできたね」、「すごいね」と褒める母親や先輩は無意識のうちに上下関係を作り出してその子供や後輩のことを低く見ています。
人が他者を褒める時、その目的は「自分よりも能力が劣った相手を意のままに操作すること」であり、感謝も尊敬もそこには存在しません。
褒めることの問題はそれだけではなく、人は褒められることによって自分自身の能力が欠如している信念を形成しています。
褒めることは、「能力や地位の高い人が、能力や地位の低い人に下す評価」という側面がある為、人に褒められることに喜びを感じるようになると、それは「縦の関係」に従属しており、私には能力が無いと認めていることと同義なのです。
賞罰教育での褒める、叱るというのは、「アメを使うか、ムチを使うか」の違いでしかなく、その背景には「操作」という目的があるのです。
「横の関係」を持つことができれば、そもそも劣等感を持つ必要性自体がありません。
劣等感というのは、「縦の関係」を意識しているからこそ生じる感情であり、「横の関係」には劣等感を生じさせる余地がありません。
一般的に、集団行動や集団での和を重んじる日本社会においては、「課題の分離」は自己中心的な概念であり、組織の統制がこの「横の関係」では取れないのでは?と考えられる方も多いことでしょう。
その場合には、上司と部下、先輩と後輩という関係のマナーやルールであると割り切って特定の感情をその関係性の中で持たないようにすることが大切です。
決してアドラーは、この上下関係でのマナーを軽視することは推奨していないのです。
要は、他人と自分を比べたり、人との競争の中で、自分はその人よりも「上」なのか「下」なのかにこだわり過ぎないことです。
アドラー心理学の提唱する「横の関係」を、より具体的に実践するコツとしましては、自分が他人と比べて「上」にいるのか、「下」にいるのかという考え方や捉え方を放棄して、自分がより「前」に進めているのか?という視点を持つことが効果的です。
もちろん、営業成績やテストの点数、会社などの組織の中での地位などで客観的にその人が誰よりも上で、誰よりも下なのかという上下関係の序列は前述の通り存在します。
しかし、その限定的で、限られたコミュニティ内での基準によって自分や誰かの存在レベルの位置を決定する必要はありませんし、そんなことで人の存在価値は決まりませんし、人が人を格付けする道理だって存在しません。
自分が、「理想の自分」や「過去の自分」と比べてると、しっかりと着実に「前」に進めているのか?「過去の自分」であれば昨日の自分でも一年前の自分でも良いのです。この観点を持ち、自分を前進させる考え方が身に付けば、「縦の関係」の考え方から脱却し、アドラー心理学の「横の関係」への理解、実践ができるようになれると思います。