アドラー心理学サロンです。
あなたもこれまで、何かを始める時に何をしようか悩んだことがあると思います。
人は悩む生き物であり、何一つ悩まずに自分がどうするべきなのかを軽快に決めて行動できる人間は皆無であると言っても過言ではありません。
ただ、決断することができず、いつまでもうだうだと優柔不断に自分が何をするのか決められないのでは、何も始まりませんし、何もできません。
そこで、本記事では決断力を上げる方法と、人間が決断をする時、つまり選択をする時に陥る様々な罠について解説していきます。
恵まれた環境は、不幸
おじいちゃん、おばあちゃんなどの年配の方から、苦労話を聞かされたことのある人は多いと思います。
実際、戦後などの貧しい時代を生きてきた人たちは、今日、明日に食べるものが不足していたりと、それは想像を絶する程の苦労があったと思います。
勉強したくても、学校に行くこともできない、自分のやりたい仕事をやりたくても、仕事の選択肢が少なくてやりたいことをやるどころか、とにかく食っていくための仕事をするしか選択肢が無かったことでしょう。
つまり、決断力があるか無いか、選択肢ががそもそも無さ過ぎて、決断する対象が無かった時代なのです。
貧しい時代を生きた人たちは、日本の戦後を問わず、洋の東西も問わず、さぞお辛かったことでしょう。
ただ、貧しい時代や恵まれない境遇で育った人たちが一概に全員、恵まれた時代や環境で育った人たちよりも不幸であった訳ではありません。
それは、なぜか?
人は、選択肢が増えて、可能性が広がり過ぎると不幸になってしまうからです!
「ええっ!」っと驚きの声が上がりそうですが、心理学的にも実証されていることなのです。
理由は簡単で、心理学には「選択のパラドックス」という法則があります。
「選択のパラドックス」とは、人は選択肢を多く持ち過ぎると、自分にとってどの選択肢が最適なのかが判断できなくなり、頑張って決断をして成功を収めても、別の選択肢の方が自分は幸せになれたのではないか?という疑念を持ち続けてしまうからです。
つまり、多すぎる選択肢は、あなたの決断力を著しく低下させるだけではなく、幸福度まで下げてしまう原因となります。
貧しいからって不幸ではない
恵まれた環境にいる人間は、恵まれない環境にいる人間はよりも一心不乱に熱中できることを見つけることも難しければ、成功しても幸せになれるのかどうかも怪しいという状況の中で生きていかなければならないのです。
たとえば、戦時中の日本人は洗脳されていて、戦争の為に心身を捧げるように命じられたロボットのように扱われていてなんとも哀れな人達だと考える人は少なくありません。
果たしてそうでしょうか?
天皇陛下という神に認められて、お国の為に命を落とすこと賛美される中で、それ以外に何も選択肢の無い環境にいるのです。
むしろ現代日本人よりも、戦時中の日本人の方が幸せであった人たちの方が多かったのではないでしょうか?
現代の日本人からすると、たとえば北朝鮮に住む人たちは生命を維持する為の食べ物に苦労して、無理矢理に軍事訓練を受けさせられたりと様々な社会的な制約の中で生きることを強いられており、可哀想な人たちだと思っている人は少なくありません。
しかし、実際の北朝鮮の人々は、思っている以上に穏やかに、平和的に生活しているそうです。
もちろん、例外はあって国家体制に疑問を感じて中国や韓国へ命を懸けて脱北して亡命する人も後を絶ちませんが、むしろ、現代日本人よりも幸せを感じている人の方が多いのではないでしょうか?
幸せになる決断力
結局のところ、人間の幸せなんて選択肢が多いのか少ないのか、決断できるできないというよりも、相対的なものです。
裕福な人がいて、貧しい人がいる。
何が恵まれているのか、何が貧しいのかという対象物があるからこそ、何が幸せで何が不幸なのかが決まるのです。
世の中に不幸の概念が無ければ、幸福の概念も存在しません。
アドラー心理学では、自分の見ている世界は主観で作り出されたものに過ぎないという考えがあります。
客観的な相対性そのものも、結局のところあなたが定義づけたものであり、あなたの主観的な解釈による客観性であり、相対性でしかないのです。
戦時中の日本人や、北朝鮮に住む人たちからしてみれば、自分の主観の中で幸せな人生を生きてきた人たちだって沢山いるのです。
もちろん、戦時中の日本人や北朝鮮の人たちと私たちは、いる環境が大きく異なります。
それは、思想の統制があるのか無いのかです。何をどう思っても、何をしても法に触れない限りは私たちは自由に選択することができます。
その自由の中で、制限の無い世界で自分で自分のやりたいことを、自分の定義した幸福や不幸の価値観を基準に主観的に決めることができるのです。
主観的に自分の価値観を定義することは、誰にでもできます。
お金の価値
たとえば、あなたは何でお金を欲しがるのですか?
多くの人々が、お金を求めてやりたくもないことをしたり、犯罪を犯してでもお金を得ようとしてしまいます。
それは、みんながお金に価値があると信じているからです。
お金なんて、実体は何の価値も無い、単なる紙っぺらと金属でしかありません。
ただ、全員でお金に価値があると思い込んでいるからこそ、何の価値も無い紙っぺらと金属のかたまりがダイヤモンドや貴金属に交換されたりするのです。
人間には、こうして集団での思い込みによる虚構を作り出して、文明を発達させてきた経緯があるのです。
「お金が無いと生きてはいけないし、みんながお金に価値があると思っていて、自分もお金を必要として得ようとしている時点で、主観的にお金の価値なんて決められないじゃないか!」
こんな反論がきそうですね。
もちろん、みんなのお金に対する思い込みを変えることはできません。
アドラー心理学の課題の分離を応用すると、他人が何をどう思うのかは、相手の課題であって自分の課題ではないからです。
「お金には思っている程の価値なんて無いんだよ!」ってあなたがどれだけ声高に叫んでも、実際に他人のことは他人には変えられません。
ただ、あなた自身がお金をどう思うのかはを変えることは、あなたの課題の範囲なので可能です。
あなたがお金を必要としない生活をしたり、「生きていけるだけのお金さえあれば十分!」と考えるなど自分の価値基準を決めることで自分の価値観に基づいたお金の価値を主観的に決めることができるのです。
決断力を上げる方法
かなり前置きが長くなってしまいましたが、決断力を上げる方法は自分を知ることにです。
世の中には、優先順位を付けて何が一番緊急度が高くて、重要性が高いのかを判断して一つ一つこなしていきましょうといったノウハウや考え方の公式であるフレームワークが多数存在します。
ビジネス書でも、決断力の鍛え方を題材にした書籍は数多く出回っており、多くの人々が決断力を上げたいと考えているのです。
しかし、多くのビジネス書で紹介されている方法には、一定の即効性は期待できても、本質的な意味で決断力を本当に上げることができるのかはいささか疑問です。
常に、自分と向き合って、自分を知ろうとする努力を続けながら決断を繰り返すことで、自分にとって何が一番大切で、何をするべきなのかが見えてきます。
なぜ、常に自分を知る努力をしなければならないのがというと、あなたは何もしなくても変化しているからです。
あなたは生きているだけで年を取りますし、新しい知識を得ては考え方もアップデートされていきます。
価値観だって、子供の頃に欲しかったもの、学生時代に欲しかったもの、今欲しいものでは、かなりの違いがあるのではないでしょうか?
「自分とは一体何者なのか?」問い続けながらも最善であろう選択を続けていくしかありません。
実際には、人間には認知能力の限界があり、すべてを知ることはできませんし、すべてを経験することもできません。
何が自分にとって最高なのかを知ることは、実際にはできないのです。
ひょっとしたら、名門の私立小学校から、ずっと名門校へ進学しては卒業し、財閥系の企業に入社せて華やかな街道を生きた人は、下町で鉄板焼きのお店で職人をやっていた方が幸せだったりすることもありえます。
ようは、自分が今の段階で認知できている選択肢の中から、決断するしか無いのです。
そこで、自分がやりたいか、やりたくないか考え過ぎないことです。
何かを始める時には、2つの軸が存在します。
それは、「やりたいこと」、「やりたくないこと」の軸と、「できること」、「できないこと」の軸の2つです。
「やりたいこと」、「やりたくないこと」の軸は、偶然に過ぎないのです。
たまたまあなたがそれを知るに至っただけであり、あなたが別の時代や国に生まれ育っていたらやりたいとも、やりたくないとも思わなかったことでしょう。
しかし、「できること」と「できないこと」は、必然なのです。
これは、外部的な環境に左右されることではなく、自分の生まれ持った性格や気質、これまでの人生経験から発生することであり、内部的なものであり、固定的なものです。
この2つの軸のうち、「やりたいこと」と「できること」が一致する方向にベクトルが極限まで合うものこそが、本当に決断してやるべきことなのです。
ただ、どちらの軸を主軸とするのかは決めておいた方が良いでしょう。
やりたいけど、できないことをやり続けるのでは、なかなか結果が付いてこないのでもどかしくも満たされない思いが付いて回ります。
やりたくないけど、できることをやり続けることも、何の刺激も少なくて退屈になることでしょう。
自分の中で、やりたいと思えることの中で、できると思えることの選択肢の中から決断して、挑戦していくことこそが幸せにつながる可能性が高いのです。
「決断」というのは、「決めて断つこと」です。
一つのことを決めて、他のことは永遠にではなくても、断って捨て去るべきなのです。
そうすることで、後々、「こっちにしておけば良かった…」なんて後悔をする危険性を減らすことができます。
手っ取り早く決断力を上げたいなら
上記でご紹介した決断力を上げる方法は、とても時間がかかる方法でもあり、すぐに効果があるかといえばかなり個人差があると思われます。
手っ取り早く決断力を上げたい、今すぐにでも決断しないといけないんだ!という方には、やはり優先順位を決める方法をお勧めします。
「もっといい選択肢があるのでは?」と悩んでしまうのは、今の選択肢に不満を持っているのか、決断する覚悟か無いのかのどちらかなのです。
結婚するかしないのかが、まさに1人しか選べない決断力を必要とする究極の局面です。
「本当に、この人と結婚してもいいのかな?」
誰しも、こう悩むことでしょう。
「付き合っている彼氏のことは好きだけど、経済的な不安定で今後の生活が不安なの…」
こちらは、女性に良くある代表的な結婚まつわるお悩みですね。
ただ、「お金持ちと結婚したいのか」、「経済的に安定して、平和な家庭を持ちたいのか」、それとも「愛する人と一緒にいたいのか」。
何を自分の中で優先するのかではないでしょうか?
どの考え方が優れているのか、悪いのかではなく、結婚するのにあたって何に重きを置くのか、自分の中て優先順位が決まっていないことが問題なのです。
自分と向き合って、自分の価値観が分からないから優先順位が決まらず、「今の彼氏よりお金のある人」や「かっこいい人」と、今の恋人には無い部分が気になって迷ってしまうのです。
自分が何に価値を見出すのか、その基準を自分のとの対話の中で見つけましょう。
事の大きさによりますが、取り敢えず決めてしまいたいことならば、優先順位を紙に書き出して1番魅力的に思えることを選択してみる方法が、手っ取り早く決断できます。