辛かった過去を乗り越えたい気持ちはあっても、辛かった過去を無意識に必要にしてしまっている人は実際ものすごく多いです。
「自分は子供の頃にいじめられたことがあって、対人恐怖症になっている」
「過去に父親にDVを受けていたせいで、男性恐怖症になっている」などなど、過去に起きたことを今の自分の原因だと思い込んでしまっている人は多いです。
しかし、過去からは影響を受けることはあっても、過去が原因になることはありません。
自分とまったく同じ経験をしている人はこの世にはいませんが、同じような過去を持ちながらも人によってあり方は千差万別ですので、当たり前といえば当たり前な話です。
つまり、今の自分を少しでも変えて幸せになりたいのなら、自分の過去に対する捉え方を変えたり、これからどのように生きていきたいのかという目的を見つめ直すことが必要になります。
辛かった過去にしがみついていて、今のダメな自分を変えられない言い訳にしてしまうと、本当にダメなままでいることになります。
辛かった過去を言い訳にしていれば、自分の目の前にある問題からは現実逃避できることでしょう。
しかし、現実から逃れていたら、ますます事態は悪化するばかりです。
誰かからの救いを待つことは悪いことではありませんが、自分から変わろうと自助努力できない人は少し良くなっても他人に依存しているので一時的には良くなってもまた元に戻るばかりでしょう。
元に戻るだけならまだしも、救いが得られても変われなかった自分に嫌気が差して、ますます自分を変える勇気を無くしてしまうかもしれません。
たしかに過去に起きたことは少なからず、今の自分に影響は与えていますし、その過去が辛いものであればあるほど、その影響は計り知れないほど大きいものです。
しかし、過去は今の自分に影響を与えることはあっても、今の自分の原因にはなりません。
アドラー心理学では、過去という原因によらず、今の自分が持つ目的によって自分は規定されていると考えます。
つまり、言い換えるとあなたが経験したあの辛かった過去は、今のあなたを規定するほどの力を持たないのです。
自分の心の中だけは、他人には支配できない自分だけが決められる領域です。
自分の心のあり方は、過去にどんなことがあろうと、今の自分がどんな状況に置かれていようと関係ありません。
環境を変えることは不可能ではありませんが、現実的ではない場合もあることでしょう。
環境ならともかく、過去と他人を変えることは不可能に等しいことです。
過去と他人は変えられない。
しかし、過去と今の状況に対する反応は自分が選ぶことができます。
辛かった過去を教訓にして、それだけの苦痛に耐えられた自分ならどんなことでも耐えられると考えたり、過去にあなたに酷いことをしてきた人を反面教師にして強く生きることも今のあなたの選択次第では十分に可能です。
辛かった過去を手放して、今を生きましょう。
今の自分は過去に何が起きたのかではなく、これからどうしたいのかで決められるのですから。