アドラー心理学サロンです。
アドラーはフロイト、ユングとともに心理学の三大巨頭の1人とされておりますが、アドラーはこの2人とは大きく異なる考え方を提唱しました。
主に、無意識の領域や人間の思考や意思を超えた概念に対してフロイトやユングとは全く異なる見解を提唱しております。
フロイトとユングも無意識の次元に着目しており、そのベースとなりうる先天的な要素とそれに働きかける過去の経験や育った環境、影響を受けている文化的な背景といった要因を解明することで際立った業績を残しました。
この2人の功績による影響から、人間の性格は本人の意思に関係なく、遺伝や過去に経験した出来事からの影響により無意識の力によって確定されるという、運命論的な人間観が普及しました。
「あなたがこうである原因は、あなたの過去のこの出来事が原因だ」という考え方で、主に患者をはじめとした相談者を精神科医やカウンセラーは励まし、時には抗うつ剤といった薬物治療によって感情を落ち着かせながらトラウマを克服できるよう治療と支援を行っておりました。
この心理学の三大巨頭は、それぞれ下記のような主張をしておりました。
【心理学の三大巨頭の主張】
「人は意識・無意識のように分けることはできない存在であり、人は各々の目的に向かって行動する」
ジークムント・フロイト(神経病学者/精神分析学の創始者)
「人の行動は無意識によって左右される」
「人の無意識の深層には、個人の枠を超えた先天的な構造領域がある」
※ ユングには、「自分の心は自分だけの物ではない、全人類の物である」といった全体主義的なところもあり、自分はみんなの中の1人という意識が強く、集団としての結束を重んじる日本人には受け入れやすいところがあります。
アドラーは、過去の経験や出来事を分析しても、現在の原因を究明するだけで、過去のトラウマを克服させようとする考えは持っておりませんでした。
つまり、フロイトとユングが唱えた運命論的な人間観に異を唱えたのです。
彼は人間を意識と無意識で分けることを否定し、またトラウマの存在である人間の運命が過去の外的要因によって決定される考え方に反対したのです。
人間を意識と無意識に分けることを、「身体の症状を精神と切り離せず、精神と身体は一体でありこれ以上分割することのできない一つの全体としてのわたし」と否定し、トラウマの存在を、「現在の自分の性格は、自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自ら決定している。」と否定しました。
そもそも同じ過去特定の経験を持つ人が同じ結果である性格を持っていない時点で過去が現在を規定すること自体に無理があるとアドラー心理学では考えます。
それから、「行動」と「感情」に備わる「目的」に着目し、人間はその目的によっていつからでも、どのようにでも変わることができるとしました。
「大切なことは、何を与えられたかではない。与えられたものをどう使うかだ」として、過去の経験や育った環境など与えられた外的要因には影響はあれど、それだけで運命は決定されることはないとしています。
世界的なベストセラーである「人を動かす」や「道は開ける」で有名なデール・カーネギーも、アルフレッド・アドラーについて「一生を人間とその潜在能力を研究に費やした偉大な心理学者」と評し、現代における数多くの自己啓発書でも例えば、スティーブン・コヴィーの「7つの習慣」などでもアドラー心理学の理論は活用されています。
つまり、アドラー心理学は、高尚で堅苦しい学問としてではなく、人間心理の理解やその到達点として広く受け入れられています。
また、余談ですがアドラー心理学と反目していたフロイトの精神分析治療も、アドラー心理学の思想に近づき始めていることから、原因追求型の治療よりも目的論型の治療の方が効果的であるとされていると考えられます。